栽培の基礎を大切に、 新しい栽培設備で収量増をめざしたい
福岡市東区三苫 堺一明さん(42歳)
今回は、両親から農地を引き継ぎ、イチゴを栽培する堺一明さんにインタビューしました。堺さんは31歳で就農。両親のハウスを手伝いながら、イチゴの栽培技術を学びました。5年前に独り立ちし、現在は一反の作付面積で約5300株のあまおうを育て、市場に出荷しています。
(令和5年2月取材)
農業とは無縁の子ども時代 家族の就農で農業が身近に
会社員の家庭に生まれた堺さん。子どもの頃は「農業」というものを意識する機会もなかったそうです。「農業体験の記憶もありません。テレビゲームが好きな普通の小学生でした」と話します。農業が身近になったのは、定年退職した祖父が米作りを始めたこと。さらに、 亡父・哲雄さんと母・和美さんが、2002年にイチゴ農家として就農したことで、農業がより身近なものになりました。「両親が就農し当時は「とよのか』を作っていました。2003年に『博多あまおう』ブランドが本格販売され品種転換していきました。私が就農する時はすでに『あまおう』でしたね」と当時を振り返ります。前職では塗装関係の仕事をしていた堺さんですが、30歳頃から両親のイチゴ栽培を手伝うようになり、結婚を機に就農。現在に至ります。
家族との時間も大切に
3児の父でもある堺さん。夏は子どもたちも一緒に畑へ連れて行き、農作業をしているそばにプールを作って遊ばせたり、イチゴのシー ズンが終わる頃には、ハウスの片付けを兼ねてイチゴ狩りをさせたりと、子どもとの時間を大事にしながら働いています。「今は保育園の送り迎えもしています。子どもたちと長く関われるところも、農業の良さだと感じます。今は妻も手伝ってくれるので、家族と過ごす時間がより増えました」と話します。
栽培の基礎を大切にした イチゴ作り
就農当初から、基礎を大切にイチゴ作りに取り組んでいる堺さん。定期的に行われているイチゴ部会の栽培講習会で学んだことや、福岡普及指導センターの指導員、JA職員からのアドバイスを吸収し、自身のイチゴ作りにしっかりと反映させています。育苗・定植・収穫についても、栽培の基本に沿ってスケ ジュールを立て作業。ただし、イチゴの果実はデリケートなため、収穫期だけは気温によってハウス横の小屋と自宅の作業スペースを使い分 けて作業しているそうです。就農し約10年、独立して5年経っても、「基本に忠実に」のスタイルは変えません。「栽培に強いこだわりはないつもりですが、より良いイチゴを作りたいという想いは年々増しています」と話します。
高設栽培の導入で収量増をめざす
今シーズンから新たに高設栽培を導入。両親の代から約20年にわたって同じ土地で地植えで栽培していたため、最近はハウスの内と外に高低差ができ、苗の生育を妨げるなどの影響を受けていましたが、 高設栽培の導入により、土壌に関する長年の悩みが解消されました。 また、体に負担の少ない姿勢で農作業ができるようにもなりました。 導入して初めての収穫は、大きさや収量面で不安もありましたが、「大きな実がたくさんでき、収量も多くて予想以上の忙しさです」と新たな栽培方法に手ごたえを感じています。来年度からは株間を狭くして植える株を増やすなど、収量を少しずつ上げられるよう工夫する予定です。
今後の目標は、新たな設備で収量を増やしていくことです。「もう一棟ハウスがありますが、今は手が回らず使用していないので、将来的には作付面積を広げていきたいと思って います」と話してくれました。