志賀島産あまおうの魅力を多くの人に伝えたい
福岡市東区勝馬・マエムラファーム 前村健太さん(42)
今回は福岡市東区勝馬でイチゴを生産する前村さんにインタビューしました。前村さんは今年の4月で就農10年目。1.7反の栽培面積で約9千株のあまおうを栽培し、市場出荷、愛菜市場やエフコープ新宮店、ネットでの販売のほか、イチゴ狩りも運営しています。前村さんからイチゴ農家になったきっかけや農業の魅力、目標などを伺いました。
「農業」という言葉との出会い
子どもの頃はサッカー少年で、練習したり体を動かしたりすることが好きだったという前村さん。就農するまで農業経験はありませんでしたが、父方の祖父が農業高校の元教師で、園芸を教えていたため、『農業』という言葉だけは子どもの頃から身近に感じて育ちました。「私が高校や大学に進学する度、『農業に触れる生活は良いよ』『土に触れ太陽を浴びて体を動かすことは健康につながるよ』と言っていました。単純に私の体を心配してくれていたのかもしれません」と笑います。
理系の高校へ進学後、神奈川県の大学では画像処理工学を学び、技術派遣系の企業に就職。他社メーカーのプロジェクトに加わり、デジタル電子回路を設計する技師として7年間働きました。「主にカーナビを作る部署でした。より生活を豊かにするカーナビの設計に携われるのは嬉しく、充実していました」と振り返ります。
震災を経験して感じた一次産業の魅力 機械と向き合う仕事から農業へ転身を決意
リーマンショックやアウトソーシング系企業を取り巻く社会情勢の変化で、漠然と転職を考えていた頃、東日本大震災を経験。人生で初めて帰宅難民を経験し、災害に弱い都会の様子を目の当たりにしました。「被災して改めて、食を支える一次産業の強さと偉大さを感じました」と話す前村さん。自分で生産から販売までをプランニングできる仕事で、安定した生活基盤を築きたいと考えた時、昔から聞いていた祖父の言葉もあって就農への第一歩を踏み出しました。
縁がある志賀島でイチゴ栽培との出会い
2012年に農業大学校の研修科に入学し、1年間花卉栽培を学んだ後、トルコギキョウの栽培を嘉麻市の花農家で1年間学びました。同時に就農準備を進める中で、花卉栽培では希望するエリアに部会がなく、農地を借りることもできないことがわかりました。学校や研修先から「イチゴが良いのでは」とアドバイスを受け、栽培品目を変更し、イチゴ栽培で農地を探し母方の実家がある志賀島で就農できることを知りました。「小さい頃から慣れ親しんだ場所でしたが、ミカンやビワ、米を作っているイメージしかなく、イチゴの栽培が盛んな地域とは知りませんでした」と前村さん。2014年から志賀島で就農し、鍋島喜代俊さんからイチゴ栽培を学びました。
2016年に現在の場所へ畑を移し、翌年には高設栽培を導入しました。「高設栽培は作業負担軽減とイチゴ狩りの運営を視野に入れ、就農から早い時期に導入を決めました。多額の費用がかかりましたが、長い目で続けるならと設置に迷いはなかったです」と話します。先を見据えて計画したことが、10年経った今、少しずつ成果として表れ、現在は3棟のハウスを構え、家族でイチゴ栽培に励んでいます。農業経営も、イチゴ狩りを始めて国や市の補助がなくても大丈夫ではないかと感じられるようになったそうです。今後は、労働時間や作業スケジュール等をより安定させることと、人を雇えるくらいの収益が出る生産体制にすることが目標です。「農業は地域のコミュニティに密接した産業です。皆で一緒に作り上げていくものだと思っています。これからも地元の先輩方とコミュニケーションをとり、力を借りながら日々がんばっていきます」と話します。
お客さんの声が一番のやりがい 志賀島のイチゴを多くの人に味わってほしい
前村さんが一番やりがいを感じるのは、お客さんに「美味しい」と言ってもらえる時だそうです。5年前からイチゴ狩りを始め、その瞬間が増えたといいます。「採れたてのイチゴを食べたお客さんの声を直接聞けることが嬉しいですね」と笑顔を見せます。
今後の目標は、いつでもイチゴが収穫できる安定した環境にすることだそうです。3~4年前から栽培に株冷(苗を冷蔵庫で冷やして開花を促進させる育苗方法)を取り入れました。収穫期が早くなり、時期をずらして収穫できるのが利点です。「通常の株と組み合わせ、安定してイチゴが供給できるようになれば、より多くの人にイチゴ狩りを体験してもらうことができ、志賀島のあまおうを食べてもらうことができます。常に健康で元気な苗を育てることを第一に考え、肥料や水、日射量を考えて栽培に取り組み、イチゴが常にある状態をめざしたいです」と想いを語ってくれました。
(令和6年2月取材)
マエムラファームでイチゴ狩りが体験できます!
3月から5月上旬まで、マエムラファームでイチゴ狩り体験(40分食べ放題)ができます。高設栽培で子どもや初めての方も収穫しやすく、収穫方法も前村さんが優しく教えてくれます。イチゴの生育に合わせて休園日が設けられていますので、ホームページまたは電話で予約の上お越しください。
ホームページ:https://www.maemurafarm.com/
インスタグラム:https://www.instagram.com/maemurafarm/?ref=badge