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農業一筋63年 少量多品目で安定出荷を実現

福岡市東区下原・秦 英紀さん(81)

 今回は、香椎地区で60年以上農業に携わり続ける秦英紀さんにインタビューしました。農業委員や園芸協会常務として活動し、長年にわたり香椎庭先野菜部会の中心人物として地域農業を支え続けています。その姿勢は地元の皆さんに愛され、頼りにされています。農業一筋の英紀さんから、農産物へのこだわりや農業への想いを伺いました。

農業の傍ら地域活動にも貢献

 高校卒業後すぐに就農した英紀さん。40代からは、農業の傍ら地元のPTAや交通安全協会、少年補導員など数多くの役職を引き受け、地域活動にも深く関わってきました。特に思い出深いのは、50代半ばから約10年間、「食と農の大切さ」を教える社会人講師を任され、地元中学校の教壇に立ったことだそうです。「中学2年生を対象にした授業で、教室での授業だけでなく、5〜6人を受け入れて農業体験もしました。生徒と共に3日間汗を流し、最終日にバーベキューをしたのは、今でもとてもいい思い出です」と懐かしみます。

原動力は今も昔も「“美味しかったよ”の声」と「チャレンジ精神」

 英紀さんは年間を通して常に農産物を出荷する体制を整え、お客さんのニーズを第一に考えた農産物作りに挑み続けています。モットーは「味も見た目もより品質の高いもの作りにチャレンジし続けること」。
 現在は自宅がある東区、新宮町と古賀市合わせて8カ所の農地で野菜や果物を生産しています。安定した生産と出荷体制ができているのは、妻の貞子さんの支えがあってこそだといいます。栽培管理は主に英紀さんが担い、貞子さんが収穫物の袋詰めや加工を担当しています。二人での農業経営では効率よく作業できるよう工夫しています。
 また、大切にしているのは「お客さんの声」。40年以上前に香椎の商店街で対面販売をしていた頃から「お客さんとの触れ合いや”美味しかったよ“と声をかけてもらうことが何よりの励み」と語ります。春先に出荷する「ゆで筍」は毎年売上が好調で、楽しみにしてくれているお客さんを思い浮かべながら、貞子さんと二人で作業しているそうです。
 土づくりでは、年々変化する土壌環境に対応するため、土壌診断をして土壌消毒や施肥を工夫するなど試行錯誤を続けています。新品種の開拓にも積極的で、エフコープのイベント等で、お客さんに感想や作って欲しい野菜を聞き、定期的に種苗業者から情報を仕入れて多種多様な品種を育てています。

農地減少や後継者不足に負けず農業を続けたい

 昭和・平成・令和とひたむきに農業と向き合ってきた英紀さん。生まれ育った香椎地区は、かつてはミカン栽培が盛んなエリアでした。英紀さんの家も果樹園だけで2ヘクタールあったそうです。地域の都市化による農地の減少、農家の高齢化や後継者不足など多くの課題を肌で感じながらも、「香椎地区の農業が続いてほしい」という熱い想いがあります。「農業は楽しいし、やりがいがあります。ですから、果樹園を中心に次世代へ繋げるものは託し、自分ができる範囲で続けていきます」と、農業への想いは今までもこれからも変わりません。
(令和6年7月取材)

 英紀さんと貞子さんが作った農産物は、エフコープ舞松原店と新宮店、マックスバリュ香椎店で販売されています。季節によって様々な野菜や果物を出荷しています。愛情がこもった旬の味をぜひ味わってみてください。

圃場DATA
果樹園:90アール
露地畑:27アール
ハウス:5棟(720㎡)
出荷品種
・野菜(トマト、ナス、葉物野菜、豆類など30種類以上)
・柑橘類(温州みかん、中晩柑類30種類以上)
・筍(孟宗竹、真竹をゆで筍に加工)