農業者インタビュー
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対岸に臨む福岡市の発展を見守り続ける塩浜地区 県内シェア7割を誇る伝統の「和白ねぎ」

塩浜園芸組合

福岡市東区の北部に位置する塩浜地区で、昭和30年頃に発足した「塩浜園芸組合」。最盛期には、タマネギや白ネギ、カブなどで生産額1億円を売り上げた実績もある管内を代表する農業地域です。今回は、同組合の生産者の皆さんから「和白ねぎ(白ネギ)」についてお話を伺いました。

住宅が立ち並ぶ塩浜エリアで育つ「和白ねぎ」

 白ネギを栽培している塩浜地区は、当JAの和白支店や農産物直売所 愛菜市場のすぐそばにあり、近くにはJR香椎線、西鉄貝塚線が走っています。畑は博多湾に向かって広がり、対岸のアイランドシティに立つタワーマンションや福岡空港を離着陸する飛行機が見える場所です。もともと海抜0メートルの砂地だった塩浜では、昔からネギ類の栽培が盛んでした。その後、農地はかさ上げされましたが、現在でも白ネギを栽培し、「和白ねぎ」の歴史とブランドを守り続けています。現在は4人の生産者が夏と冬の年2回市場へ出荷しています。栽培期間は気象条件にもよりますが、夏も冬もそれぞれ10カ月ほどかけて大切に育てられます。

最短距離で市場へ出荷 より新鮮な白ネギを消費者へ

 塩浜地区は出荷先の青果市場(ベジフルスタジアム)まで車で約15分と、福岡市内で最も近く、どの産地よりも新鮮な野菜を出荷できるのが魅力です。「和白ねぎ」も地の利を活かし、新鮮な状態で届けられるよう計画的に収穫・出荷しています。生産者の皆さんは、「暑い時季は冷蔵庫を使うこともあるが、出来るだけ冷蔵保存しなくていいように収穫のタイミングと出荷作業のバランスを見て出荷するように心がけている」と話します。新鮮なネギは熱を加えると甘みが増すことが特徴で、農産物直売所 愛菜市場の常連客にも人気です。

県内シェアは7割以上 福岡市内の小学校給食にも供給

 令和4年度の白ネギに対する「和白ねぎ」の県内出荷シェアは約72%(集計期間:令和4年4月~令和5年2月)。夏季(7月~8月)の出荷量は、県全体の約81%を占め、塩浜地区は白ネギの産地として高いシェアを誇っています。また、地元産の白ネギを子どもたちに知ってもらおうと、福岡市内の小学校の給食にも毎年供給しています。令和4年度も約4.7トンを出荷しました。

異常気象に対応しながら安定生産めざす

 今後の課題は。近年増えている異常気象への迅速な対応です。令和4年度は、年間降水量は変わらないものの、夏は雨が少なく冬は多いという降水量のバランスの悪さが、収穫に大きく影響したそうです。また、ゲリラ豪雨のような短期間で局地的に降る大雨も、地中で育つネギを腐らせてしまいます。10カ月かけて育てる中で、このような異常気象が原因でネギが上手く育たず、収穫自体が出来なくなる畑もあるそうです。生産者の久保田郁一さんは、「異常気象の影響で、年々育て方に工夫が必要になってきている」と露地栽培の難しさを話します。毎年気象データや栽培記録を細かく記録し、次年度の栽培計画に活かしているそうです。栽培品種を変えたり、水の管理を工夫したりと、試行錯誤しながら「和白ねぎ」を生産している塩浜園芸組合の皆さん。消費者に新鮮で美味しいネギを安定して届けるため、これからもたゆまぬ努力は続きます。

 塩浜で育った「和白ねぎ」は、農産物直売所 愛菜市場でも販売しています。採れたての白ネギは香りがとても良いので、ぜひ直売所で手に取って確かめてみてください!

(令和5年3月取材)