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父親の農地を引き継ぎ就農 美味しくて体に良い農産物を届けたい

福岡市東区志賀島 宮本宗吉農園・佐古 仁さん(64)

 今回は、福岡市東区志賀島で佐古仁さんにインタビューしました。佐古さんは56歳の時に妻の由美さんと義父の畑を引き継ぎ就農。亡き父への敬意を込めて名付けた「志賀島 宮本宗吉農園」でイチゴや果樹等を生産して8年が経ちます。就農のきっかけやイチゴと柑橘類を育てる栽培方法へのこだわり、志賀島での農業に対する思いなどを伺いました。

父親の農地を守るため自己流で栽培をスタート

 30年前に志賀島で義父のビニールハウス建設を手伝った佐古さん。早朝から自然に囲まれて作業する気持ち良さを知り、農業に魅力を感じ始めました。就農前は広島県を拠点に医療関係の営業をしていましたが、54歳で福岡県に単身赴任となり、由美さんの両親と同居することになりました。同居して1年半がたった頃、父親の病気が判り、改めて就農を意識したといいます。「父から『定年はいつだ』とよく聞かれていました。一緒に農業をしたいと思ってくれていたようです。定年まで10年程ありましたが、父の健康状態を考えると早く就農した方が良いのでは、と思うようになりました」と振り返ります。父親の作るイチゴはとても美味しく、自分の手で守りたいと常々思っていました。定年後に跡を継ぐ予定でしたが、知人からの「やりたいことは50代のうちに始めた方がいい」というアドバイスが追い風となり、未経験で農業の道を決めました。就農時すでに父親が他界していたため身近で教えてくれるひとは居らず、全くの素人の状態からイチゴと果樹の栽培をスタート。「母の記憶や地元農家さんに助けられました。また、福岡普及指導センターの方から栽培方法を教わったり、本を読んで勉強したりと独学で始めました」と当時の苦労を語ります。現在は、志賀島に点在している果樹園で甘夏を中心にニューサマーオレンジ、ビワやスモモなどを栽培しています。イチゴ栽培の合間に夫婦で草刈りなどをしていますが、剪定や間伐などの大掛かりな作業はJA青壮年部の果樹低木化の際に作業を依頼し整備しています。「農業の魅力は、良くも悪くも結果が目に見えやすいこと。自然が相手の農業に厳しさと面白さを感じながら、大変なことも素直に受け入れ、自分の努力と工夫でより良い農産物の生産をめざしています」。

栽培方法を毎年工夫 安全安心な農産物をめざす

 栽培の一番のこだわりは、化学肥料と農薬をできるだけ使わないことで、就農1~2年目から減らす努力を始めました。きっかけは農薬散布の際、「自分自身も農薬を浴びているのでは」と感じたこと。可能な限り使用を減らし、イチゴは毎年作り方を変えるなど工夫しています。4年前に、県の「ふくおかエコ農産物認証制度(※)の認証を受け、安心して食べられる美味しいイチゴ作りに日々取り組んでいるそうです。「今では、認証を受けた基準のさらに半分の量で栽培しています。収量は減りますが、安全で体に良いものを消費者へ届けたいという気持ちで作っています」と思いを語ります。今後の目標は、化学肥料と農薬をさらに減らした栽培方法で質の良いイチゴを作ること。オーガニック栽培が理想だそうです。柑橘類も樹上完熟したものを必要な時に、必要な分だけ収穫しています。「化学肥料や農薬除草剤を使っていないので皮まで安心して食べられますよ」と笑顔で話します。
 今一番のやりがいは、お客さんと触れ合う中で、「美味しかったよ」と直接言ってもらえることだといいます。「リピーターが増え、自分を認めて買ってもらっている責任感と緊張感が湧いてきました。同時に、喜んでもらえるようにもっと頑張ろう、より良いものを作ろうというモチベーションにもなっています」と嬉しそうに話します。

※化学合成農薬の散布回数(成分回数)と化学肥料(窒素成分)び使用量をともに県基準の半分以下で生産する栽培計画を認証する制度

志賀島農業の未来のため自分ができることに力を尽くしたい

 志賀島で農業を始め、豊かな自然を次の世代に繋ぎたいという思いも芽生えてきたといいます。「志賀島には様々な思いをもった農家さんがいます。事前に恵まれた場所だからこそ、自分の農業理念を大切にしながらこれからも出来る範囲で続けたいです」と農業に対する思いを口にします。就農して地元の歴史にも興味を持つようになったそうで、「例えば、海の神様を祀る志賀海神社では、山を讃える『山誉祭』も行われます。昔から海と山の両方の恵みに感謝する文化が根付いている素晴らしい場所だと思います」と目を輝かせます。志賀島の自然に感謝しながら、より安全で美味しい農産物を消費者に届けることを目標に、これからも佐古さんの挑戦は続きます。
(令和6年5月取材)

佐古さんが育てた農産物はネット販売しています!

 自然豊かな志賀島で育ったイチゴや甘夏は、ホームページから購入できます。また、2月からドライイチゴの販売も始めました。
【販売時期】イチゴ…12月~4月/甘夏…5月/ビワ…6月/スモモ…7月
※天候により変動があります。詳しくはホームページをご確認ください。

ホームページ:https://home.tsuku2.jp/storeDetail.php?scd=0000094257
インスタグラム:https://www.instagram.com/158sako/