農業の魅力・厳しさを伝え、未来を支える若者を育てたい
東区香椎下原・笠井宏美さん(44)



今回も香椎下原地区等で農業に取り組む笠井さんにインタビューしました。笠井さんは(株)マイファームに入社後、個人事業主としてroot88(ルートダブルエイト)という屋号でも活動中。農作物を育て販売したり、貸し農園や学校などで農業支援をしたりと農に幅広く携わっています。今回は、農業に携わりながら次世代の農業者や農業関係者を育成する笠井さんの原動力や、学生に伝えたい思いなどを伺いました。
笠井さんは、(株)マイファームに所属し、農業の傍ら2021年から通信制高校や専門学校(写真は笠井さん(前列右端)と福岡ホテル・ウェディング&製菓調理専門学校の皆さん)で農業講師も務めています。特に不登校の高校生に野菜づくりを教える授業では、農業の力が人の心を変える場面を何度も目にしてきました。最初は目も合わせなかった生徒たちが、収穫の喜びを知り、収穫した野菜を家族と共に食べることで大きな変化を遂げる—農業には、そんな不思議な力があると、笠井さんは実感しています。
また、専門学校では農業後継者等の育成にも力を注ぎます。しかし、農業を継ぐには大きな壁があると痛感しています。まず、教えてくれる人が少ないこと。さらに、条件の良い農地はほとんど残されていないことも挙げられます。笠井さんは、学生たちにさまざまな栽培方法を教えながら「自分ならこの土地をどう使うか」という視点を持たせ、自ら考え行動できる人材を育てようと心がけています。
特に重要だと考えているのは、地域社会との関係構築です。農業は自分一人だけで成り立つものではなく、地域の人々との信頼関係が不可欠。しかし現代の若者は、対面でのコミュニケーションに慣れていないことが多く、地域に溶け込む難しさを感じています。笠井さんは、学生時代に地域との関わりを経験し、人間関係の大切さを体感してほしいと願っています。
この春からは休耕地を借り、実践的な実習をスタート。安全面に配慮しつつ、学生がよりリアルな農業体験ができるよう準備しています。具体的な活用法を考えながら農地に向き合うことで、学生たちに現実の農業の厳しさと面白さを伝えたいそうです。
「大好きな農業に携わりながら、未来を支える人材を育て、多くの人に農の力を届けたい」と意気込む笠井さん。農業への挑戦は始まったばかりです。