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「後を継ぎたい」と思える農業経営をめざしたい

福岡市東区松島 小山 博美さん(65歳)・正朗さん(28歳)

 小山さん一家は、博美さん、妻の恵津子さん、息子の正朗さん、そして博美さんの母 美子さんの4人で、2反の栽培面積でミズナやコマツナ、シュンギクなどの軟弱野菜を生産しています。今回は、博美さんと正朗さんから、それぞれの農業に対する想いを伺いました。

祖父母から受け継いだ農業 就農15年目には新たなハウスで再出発

 博美さんは今年で就農23年目。会社勤めを辞めて就農したのが42歳、正朗さんが4歳の時でした。「農業は大学生の頃から手伝っていたので、未経験者よりはスムーズに始められました」とはなします。2011年に農地を移転し、現在のハウスで栽培をスタート。前の持ち主が花卉農家だったため、野菜栽培では珍しいガラス張りのハウスです。購入した当時は土壌が悪く、石が混じった畑を整備するところから始まったそうで、「始めの3~4年は野菜が全く作れませんでした」と当時の苦労を振り返ります。10年以上が経過した今は、立派な野菜畑が広がっています。

「いつかやるなら早いうちに始めよう」と就農を決意

 正朗さんは小さい頃から体を動かすことが好きで、10歳から高校卒業まで野球に打ち込むスポーツ少年でした。「実は子どもの頃は家業である農家を一度も手伝ったことがなく、両親から手伝うように言われたこともなかったんです」と話します。小学校低学年の頃は、博美さんが地域の消防団に入っていたこともあり、将来は消防士になりたいという夢を抱いていたそうです。「ただ、成長していくにつれて『将来は自分も農業をするんだろうな』と漠然と思うようになっていました」と話します。大学卒業後は就職するつもりでしたが、「いつかやるなら、若くて元気なうちに始めよう」と考えるようになり、大学卒業後に農業大学校に入校。農業の基礎を学んだ後、親戚の農家で1年半かけて軟弱野菜の栽培技術を身に付けました。今年で就農6年目になります。

「手をかけただけ良い野菜ができる」から「妥協しない、手を抜かない」

 「野菜作りは手をかけただけ良いものができる」と話す博美さん。その言葉通り、野菜作りには一切の妥協も許さずに取り組んできました。「草取りなどの基本的な作業を丁寧にやる。手を抜いたら良質な野菜はできません」とほ場管理の大切さを語ります。その姿を見てきた正朗さんは、「農業に向き合う父はストイック。自然が相手なので、思い通りにならない大変さがあります。だからこそ、父の『手を抜かない農業』を手本にしたいです」と話します。また、2人が農業を続ける原動力になっているのが、今年91歳になる博美さんの母 美子さんの存在です。「祖母が頑張って働いている姿を見ると、『自分も頑張ろう!』とモチベーションがあがります」と思わず笑みがこぼれる正朗さん。博美さんも「母は農業の師匠。長年かけて積み重ねた経験と知恵は何ものにも代えがたい財産です」と話します。

「小規模農業だからできること」に挑戦したい

 今後について博美さんは、「地元では離農者が増え、農業を続ける人の環境は年々厳しくなっていると感じています。息子には趣味を楽しめる程度に頑張ってもらえたらいいと思っています」と話します。しかし正朗さんは、そのような状況でも「小規模農業の強みを活かした農業をしていきたい」と力強く話します。「販売ルートも年々多様化しています。代々受け継いできた栽培技術や農地を活かし、いろんな挑戦をして『もうかる農業』を実現したいと思っています。将来子どもができた時、『農業を継ぎたい』と言ってもらえることが目標です」と、引き継いだバトンを次世代へ繋ぐ強い信念を語ってくれました。

 小山さんが丹精込めて育てた野菜は、サトー食鮮館松島店、ダイレックス松崎店に出荷しています。出荷する野菜の種類や量は、時季によって異なります。予めご了承ください。

(令和5年5月取材)