農業者インタビュー
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『箱崎そ菜』の歴史を守りながら、鮮やかで味わいのある野菜を作り続けたい

福岡市東区箱崎 木村 洋介さん(42歳)

家業を手伝う中で芽生えた就農への想い

 農家の長男に生まれた洋介さん。子どもの頃は、代々続く家業を手伝うこともなく、友だちと外で遊び、水泳や英会話など様々な習い事をして過ごしました。「父から『農業を継いでほしい』と言われることはありませんでしたね」と思い返します。26歳頃に会社を辞め、転職活動の傍ら父親の畑で葉物野菜の生産を手伝う日々が、農業を始めるきっかけになったそうです。「手伝う中で農業に興味が湧いて、気が付いたら農家になっていました」と笑う洋介さん。平成27年12月に、父の謙介さんが現在のハウスを建てたことを機に、本格的にリーフレタスの栽培をスタートしました。

ハウス内は土足厳禁 清潔な環境で育てるリーフレタス

 箱崎の住宅街に建つハウスの広さは357平方メートル。メッシュ状の強化ビニールが使われ、通常よりも頑丈で風通しが良く、害虫の侵入を防ぐ工夫もされています。高設台には、地下水と養液で水耕栽培されたみずみずしいリーフレタスが並びます。品種は、サラダ等でもおいしく食べられるよう、柔らかいものを厳選し、さらにハウス内は土足厳禁。土もほとんど使わないため、清潔な環境で栽培し、収穫・出荷できます。
 播種から収穫までの期間は約2カ月。季節により多少変わるものの、大まかな栽培周期を把握できるため、栽培スケジュールが立てやすく、自分の時間も作りやすいといいます。「会社員時代は福岡県内でルート営業をしていました。残業も多く、自分の時間が確保できませんでした。仕事とプライベートのメリハリがつけられるようになった点は、気持ちの面でとても大きいです」と話します。
 今後の課題は「夏の暑さ対策」。真夏のハウス内は40度を超えることもあり、今年の夏は特に苦労したといいます。「暑すぎるとレタスの生育に影響を及ぼすので、風通しを良くしたり、ハウス内を冷やしたりと、試行錯誤しながら対策しました。来年以降も猛暑は続くと思うので、レタスの品種を暑さに強いものに変えたり、栽培の時期を変えながらベストな方法を見つけていきたいです」と話します。フリルや大きさのバランスが良い綺麗なレタスが採れた時は何より嬉しく、農業に対するモチベーションが上がるそうです。

箱崎の農業を担う一人として頑張っていきたい

 就農したことでの一番の変化は、「人とのつながり」と話す洋介さん。以前は、顔見知り程度だったご近所さんとも、就農後は交流する機会が増えたといいます。また、農業者同士のつながりも多くなり、洋介さんの大きな支えになっているそうです。就農して15年、今では次世代を担う農家として、仲間から頼りにされ、慕われる存在になりました。「私たちの祖父や曽祖父の代は、葉物野菜の栽培が盛んで、『箱崎そ菜』と呼ばれるほど有名な農業地域でした。今はマンションや住宅が立ち並び、時代の移り変わりで箱崎地区も農家が減ってきていますが、頑張った分だけ成果がでるのが農業の魅力。これからも皆で『箱崎そ菜』の歴史を守っていくために頑張っていきたいです」と力強く話してくれました。

 洋介さんが、愛情込めて育てたリーフレタスは「フードウェイ久山店」「サトー食鮮館松島店」で購入できます。ちぎってサラダにしたり、しゃぶしゃぶのように鍋にさっとくぐらせて食べるのがおすすめとのこと。人気商品のため品切れになることもありますので、店頭で見かけた際はぜひ手に取ってみてください。

(令和5年10月取材)