農業者インタビュー
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地域とともに歩んだ70年の農業人生 感謝の心で箱崎蔬菜をこれからも

福岡市東区箱崎・川嶋 久五郎さん(83)

今回は箱崎地区の川嶋久五郎さんにインタビューしました。箱崎地区の誰もが一目置く農業者として慕われ、長年にわたり箱崎園芸組合や農業委員を任され、また、現在も筥崎宮の責任役員を務める等、地域のために力を注いでいます。箱崎蔬菜である「コナ(ダイコン菜)」を中心に軟弱野菜や庭先野菜を生産し、83歳の今も毎日のように畑で実直に野菜を作る姿は地元農家の手本であり、尊敬を集めています。久五郎さんから農業の歴史や野菜作りの魅力、次世代への想いを伺いました。

農作業が人力の時代に就農 肌で感じた農業技術の発展

小学生の頃から牛車で当時東区千代にあった市場へ野菜を運び、中学卒業と同時に就農した久五郎さん。「百姓の子は百姓になる。そういう時代だったので子どもの頃から跡を継ぐものと思っていました」といいます。当時は農作業が人力の時代、牛や馬をひいて約2町の田畑をすいていました。「子どもだったので体の大きな牛や馬になめられることもありましたね。全く言うことを聞いてくれなくて苦労しました」と懐かしげに笑みを浮かべます。その後農業技術が発達し、耕運機が発売されると箱崎地区で一番に導入。作業がはかどり重宝した一方で、故障した際は福岡市農協(天神)へ修理に行かなければならないなど大変なことも。「当時と比べ今は農作業の負担が減り作業時間も格段に短くなりました」と自らの体験と重ねて農業の変遷を語ります。

箱崎で昔から愛される野菜を自分のペースで作り続けたい

暑い季節以外は朝5時に起き、一日の大半を畑で過ごします。「自分のペースで作業計画が立てられる点も農業の魅力。家でテレビを見ているより健康的でずっと楽しい」と生き生きと話します。野菜作りのこだわりは化学肥料を使わないこと。親戚から手作りの堆肥を分けてもらい昔ながらの野菜作りを実践しています。市場への出荷用に作る野菜で最も愛着を持っているのは箱崎で昔から生産され続けているコナ。今は箱崎管内での生産農家は3軒だけとなりましたが「市場の需要が高く評判も上々で作りがいがあります」と笑顔と誇りを滲ませます。市場やスーパーに出荷した野菜が完売するととても嬉しく「明日も野菜が作れる」と力が湧いてくるそうです。

家族で農業を続けられることへの感謝と喜び

福岡市のなかでも都市化が著しい箱崎地区。昔に比べ農地は減り生産する品種や量も変わりましたが、確固たる信念で農業に取り組む久五郎さんは一度も辞めることを考えたことがないと言います。「自分には農業しかないと思って生きてきました。先祖代々の土地があるから農業を続けることができたと感謝しかありません」。現在、息子の仁さんは米を、孫の康久さんは青ネギ「箱崎小町」を作り、家族で農業を営めることに喜びを感じている久五郎さん。「子どもたちには農機具や農業技術など新しいものを上手く取り入れ、無理なく農業を続けてほしいです」と想いを語ります。

次世代を担う農業者への想い

これからの地域農業を担う農業者には「仲間との連帯感を大切にしてほしい」と願う久五郎さん。「特にコロナ禍以降は、昔ながらの付き合いが減ってきたように感じます。膝を突き合わせて対話すれば、悩みも打ち明けやすく結束も強まる。困った時にこそ助け合えるような仲間作りをして、地域農業を次世代へ繋いでほしいです」と期待を寄せています。
(令和6年9月取材)

 久五郎さんが生産した野菜は、ダイレックス松島店とサトー食鮮館松島店で購入できます。季節により野菜の種類や出荷量は異なりますので四季折々でぜひ味わってみてください。

圃場DATA
露地畑:約10アール
ハウス:9棟(約1,983㎡)
出荷品種
コナ(ダイコン菜)、コマツナ、ミズナ、シュンギク
ナス、エダマメ、カツオ菜